日本では理系学部の大学に通う大学生の半数以上が大学院へと進学します。大学院にしんがくすると当然学費がかかりますが、それ以上のメリットがあるのでしょうか? 大学院進学のメリット、デメリット。大学院進学に向いている人、向いていない人について解説します。
大学生のうちから自分のキャリアを考える
このサイトはゴルフに関する情報を発信するサイトですが、ゴルフ自体が私のキャリアに大きく関わっていることでもあるので、好きなこと(私の場合はゴルフ)を仕事にして行くという観点からキャリアについて書かせていただきます。
キャリアを考えるにあたって、日本の理系大学生が当たり前のように大学院へ進学しています。私立理系大学で役半数。理系国公立大学になると7割程度の学生が大学院に進学します。大学院に進学することは全く悪いことではないですが、大学院に進学してその恩恵を受けられる人、受けられない人がいます。せっかく修士課程の2年間お金と時間を費やすわけなので自分や、自分の子供が大学院に進学するべきか、卒業して働くべきかしっかりと考えたいですね。
大学院に進学するメリットとは?
理系学生がこぞって進学する大学院とは一体どんなところなのでしょうか?そして進学することによってどんなメリットを得られるのでしょうか?
大学院はより深い専門分野を手に入れるところ
同じ工学部卒業でも、学部生と大学院生では専門分野に対する知識量が異なります。大学院生は研究テーマに対する実験の連続であり、その成果を学会等で発表することが求められます。また所属している研究室が企業と共同研究を行なっている場合には、自分の研究成果が実用化に繋がる経験もできるかもしれません。その点学部生は研究室に所属する時間は1年程度。しかも半分以上は卒論制作に追われるので専門分野に関する知識は学部生と大学院生では圧倒的な差があります。
進学後のメリット
大学院へ進学する最大のメリットはしっかり勉強して研究に打ち込めば専門性を高めることができるということです。専門性以外の部分で大学院に進学するメリットをあげるとなると以下のようになります。
- 学生生活が余分に2年間長くなる
大学院に進学し毎日研究室に缶詰状態といっても学生です。社会に出て働いている人と比べるとストレスなどは少ないでしょうし、成果をとことん要求されることもすくないでしょう。また新幹線が学割料金で利用できる点も大きなメリットです。 - 教授が付き合いのある企業に推薦がもらえる
学部生では教授との関係構築が難しいですが、一緒に長く研究をしている大学院生は就活時に教授から推薦がもらえることもあります。そのような恩恵を受けたい場合は企業と太いパイプを持っている教授の研究室をえらぶことも必要です。 - 新卒時の給料が高い
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査結果」を参考にすると大学院卒と学部卒では平均月3万円ほどの差があると記載されています。
研究が好きでないなら大学院への進学はデメリットだらけ
私もその1人ですが、大学院への進学を考えたことは1秒もありません。研究に面白みも感じず、夢が研究者ではなかったからです。学部生の頃から早く社会に出て経験を積みたいという思いがあったという面もあります。
僕のような大学院へ進学する気0%な人は進路選択に迷わないでしょうが、問題なのは迷っている人たちです。学生の間に以下のような噂が吹き込まれるのでなんとなく大学院に進学した方が今後の人生良さそうだという考えになり、みんな大学院へ進学していきます。これが日本の理系大学生の半数以上が大学院に進学する理由です。
・大学院に進学した方が就活で有利
・大学院に進学した方が生涯賃金が高い
・企業で研究開発職につくなら大学院卒でないとだめ
・大学院卒の方が出世が早い・・・etc
これらは、はっきりいって全部”ウソ”です。正確には世の中の変化で”ウソ”になってしまったこともあります。
大学院に進学しても就活で有利にならない
大学院に進学したところで就活で有利になるようなことはありません。学部生であっても就活で引く手数多な学生はいますし、大学院生であっても全然就職先が決まらない学生もいます。結局はその人自身の問題です。
ただし、大学院で勉強、研究を頑張り特別な成果がある人や、企業と共同研究を行なっていてヘッドハンティングのような状態になっている学生にとっては大学院に進学することが就活で有利になっている例もあります。
終身雇用の時は大学院生の方が生涯賃金が高かったが・・・
これは自体の変化によって大学院卒のメリットが”ウソ”になってしまった事例です。かつての終身雇用制度がどの企業にもあった時代は年功序列で給料が上がっていきました。このような企業には給与テーブルがあり、横軸に能力給(学部卒と大学院卒では能力給で違う等級に分けられます。)縦軸に年齢級があり、毎年給与が上昇していくので定年までで比べると平均して大学院生の方が多く給料ももらえるような仕組みになっていました。
ですが、いまは大手メーカーであってもいきなり倒産や買収される可能性があり、2人に1人が転職を経験する時代です。転職先では上記のような給与テーブルは存在しません。入社時の給与交渉も自分で行う必要があります。給与の大幅だアップもあれば、ダウンもある世の中なので一概に大学院卒の方が生涯賃金が高いとは言えない世の中になってきています。
学部卒でも研究開発職になれる
大学院卒出ないと研究開発職になれないなんてことはありません。入社してから担当した業務の専門性を高めていくのであれば学部生でもなることができます。大学院での勉強はたかだが2年です。社会に出てからの方が勉強する時間は圧倒的に長いのでむしろ差がつくのは社会に出てからでしょう。
ただし、学部卒は無条件に工場勤務、研究開発は大学院卒のみ採用という企業もあります。学部卒で研究開発職に携わりたい人は事前に調べておく必要があります。
同じ能力のなら学部生の方が出世は早い
どこから生まれた噂なのか、大学院卒の方が出世が早いという噂があります。これは経営者の視点に立てば一目瞭然。学部卒のAさんと大学院卒のBさんが同じ能力だとするとどちらを出世させた方が会社にとっていいでしょうか?
当然学部卒で人件費の安いAさんです。
ただ、これも1つの会社にい続けた場合で、1度でも転職してしまえは給与もばらばらになってしまうので出世もその人の実力次第ってことになりますね。
なぜ大学の教授は大学院への進学をすすめるのか?
少し言い方が乱暴かもしれませんが、大学院はどんなところか一言で表すと所属する教授の研究の助手的なポジションです。大学の教授は専門分野の研究テーマをいくつか持っています。教授が研究テーマを決定し、その研究テーマに沿って大学院生、学部生が実際に腕を動かすといった仕組みです。
実際に手を動かしてくれる大学院生がいないと教授の研究は成り立たないことになります。大学院生がおらず研究が進まなければ研究で成果を出すことが難しくなります。成果が出なければ教授自身が出世できなくなったり、研究に対する補助金がもらえなくなってしまうので大学の教授たちは大学院生を集めたくて仕方がないんです。そのために上記のような”ウソ”の噂が流れているのでしょう。
研究者になりたければ積極的に大学院へ進学すべき
すこし大学院を否定するような書き方をしましたが、研究者になりたい方や、実験や基礎研究が好きな方は積極的に大学院へ進むべきだと思います。そしてもっと極めたければその上の博士課程にまで進んでさらに専門性を極めましょう。日本の産業や医療が研究者の基礎研究によって支えられているのは間違いない事実です。
だからこそ大学院から先は専門性をより高めたい人がいくべき場所であり、なんとなく進学する場所ではないということです。
なんとなく周りのみんなが大学院へ進学するから進学するという人や、せっかく子供を理系の大学に入れたからせっかくなら大学院まで行かせようと考えている方は進学はやめて、大学院生よりも2年早く社会にでて大学院卒に負けない力をつけておいた方がメリットは大きいはずです。